2025/12/10
とかちの
ビジネス
とかち・イノベーション・プログラム2025(TIP11)事業構想発表セッションレポート
-"Wants"から生まれる、事業の種-(前編)
みなさま、こんにちは。
事務局の川野です。
以前のコラム「十勝から生まれる挑戦の芽 -とかち・イノベーション・プログラム(TIP)-」でご紹介したとおり、TIPは地域の未来を切り開く挑戦者たちが集う場です。
11月28日、約5カ月間の集大成となる「事業構想発表セッション」が開催され、9つのチームが、経営者や投資家の前で熱い思いを込めた事業プランを発表しました。
TIPの特徴は、チーム制で事業プランを磨き上げていく点です。
これまでのセッションでは、参加者がともに切磋琢磨しながら、事業のアイデアに磨きをかけてきました。
特に、専門家にフィードバックをもらう「スパーリングセッション」では、「お金が稼げるビジョンが見えない」、「このままでは発表はできない」など、厳しい意見も飛び交い、深夜まで続いた打ち合せの中で、数々の苦労を乗り越えてきたのです。
「主犯」として新たな事業を切り開こうとするチームの代表、そして主犯を支える「共犯」、や「サポーター」たち。チーム全員が、この日に向けて全力で準備をしてきました。
本コラムでは、この「事業構想発表セッション」の様子を振り返ります。
今回は前編として、主催者挨拶やプログラムの説明、そして発表された9つの事業構想のうち5つをご紹介します。
これまでの集大成、7分間で発信
まず、主催者を代表して登壇した帯広信用金庫の中田真光理事長は、プログラム参加者に向けて「これまでの経験が皆さんにとってのかけがえのない財産で、今日はその集大成です。7分間という短い時間で思う存分発信してください」とエールを送りました。
本気の挑戦が生まれる場
続けて、プログラム開発者で、野村総合研究所チーフエキスパートの齊藤義明氏が、TIPの目的や他のプログラムとの違いを説明しました。
特にTIPの特徴について「社会課題ではなく、自分自身の”やりたい”という思いから出発することで、本気の挑戦が生まれる場である」と述べ、TIPから生まれたユニークな創業事例も紹介しました。
多彩なテーマを持つ、9つの事業構想
お待たせしました。
ここからは、発表された事業構想を一つずつ紹介します。
今回は、食、暮らし、教育、地域資源の活用など多彩なテーマを持つ9つの構想が披露されました。
どのアイデアも、社会課題へのアプローチというよりは、企画者自身の原体験や「こうしたい」という思いから生まれたもので、自己表現を大切にした挑戦が印象的でした。
①〆の味噌汁 -IHIJU- 「1日の終わりを優しく締めくくる一杯をお届け」
トップバッターは「〆の味噌汁」。
飲み会後の“〆のラーメン”に加わる、新たな選択肢として提供する事業です。
管理栄養士の資格を持つ主犯の杉山夏菜さんは、帯広の夜の街に、やさしい味噌汁で1日を終える文化をつくり出すことを目指しています。
まずは、帯広駅前での間借り営業から始め、北の屋台への出店、ゆくゆくは常設の味噌汁スタンドの開店を視野に入れています。
メニューは季節ごとの野菜を使った味噌汁の他、ユニークな具材を生かした「ブラック味噌汁」「ポタージュ風味噌汁」などの変わり種も用意します。
営業スタイルは「立ち飲み」、「2杯目以降のお酒は2,000円」と回転率を上げる工夫も凝らします。
食に関わるメンバーで構成されたチームが描く未来は「気付いたら健康になれる社会」です。
単に味噌汁を提供するだけでなく、健康的な食文化を帯広の夜に根付かせることを目指します。
清水町内に100件以上の空き家がある。でも不動産業者がいないから物件取得までに時間がかかってしまう…。
そこで、「起業を志す挑戦者に空き家を有効活用してもらおう—」。
そんな思いから立ち上がったプロジェクトです。
自身も移住者である主犯の梶野健人さんは、清水町に移住してから空き家が解消されない現実に直面し、起業する難しさを感じていたといいます。
そこで、この問題を解決しようと、町内の空き店舗を改修し、1階はチャレンジショップ、2階は宿泊施設として活用し、挑戦者に貸し出します。
挑戦者は宿に泊まりながら商売に挑戦します。
一方、チャレンジショップでは訪れた町民による投票が行われ、集客状況と合わせて高評価を得ると「スカウト」を受けることができます。
スカウトされた挑戦者は、その後も事業が定着するまでサポートを受けることができます。
「100件の空き家を100件の商店に」―。町全体での協力と支援を通じて、清水町を活気のある街にするビジョンを掲げました。
③アートカチ【art×tokachi】 「プロといたずらアート」
「自己肯定感や創造力といった『非認知能力』を育てる現場が十勝にはない」。
新得町内でアート教室を運営する主犯の白石歩さんはそんな思いを抱えていました。
そこで、「プロといたずらアート」という、十勝の専門家と子どもたちをつなぎ、子どもたちの生きる力を育む全く新しい教育事業を提案しました。
八百屋、農家、パン屋など地域の「プロ」が子どもたちに本物の素材や技術を提供し、子どもたちは自由に遊びながら創造力を発揮します。
「はみ出す」「混ぜる」「失敗する」などなんでもOK。
正解も間違いもなく、過程を共有することで自己理解と協働性を育む場です。
親子が地域とのつながりを深め、育児の楽しさを再発見できる機会を得ることができるなど、親にとってもメリットがあります。
新得町からスタートし、ゆくゆくは「十勝全体へと広げていきたい」と力強く語りました。
④十勝の魅力発信チーム 「本質に体温を。-十勝の“良いもの”を”選ばれるブランド”に変えるSNS広報支援」
十勝には魅力的なサービスや事業が多くあるものの、本来の魅力を伝えきれていない。
こういった企業の課題に応え、SNSを活用して「選ばれるブランド」に変えるサービスを提案しました。
その名も「十勝SNS編集部」。
チームの主犯は、雑誌の製作会社の社員でもあり、SNSの運用に自信を持つ藤岡祐太さん。
2カ月間かけて企業を徹底取材し、その魅力を深掘りしていきます。
SNS戦略では、数値分析に基づき運用の精度を高め、長期的に成果を出すアカウントへと育てていきます。
雑誌編集で培った取材力と編集力を生かし、背後にある「温度感」まで汲み取ることは、オンライン完結型の業者には真似できない唯一無二の強みです。
企業向けには年間240万円で受けられる他、入口としてSNSアカデミーも開催します。
事業を通して「良いものが正しく評価される世界になること」を目指します。
⑤TOKACHI ALMOND TERRA 「世界最北のアーモンド産地、十勝から世界へ。」
国内では誰も成功したことがない、食用アーモンドの栽培を目指す事業です。
世界的なアーモンド需要の増加に伴い、国内でもアーモンド不足や価格変動が予測されています。
日本でも栽培に挑戦する試みはあるものの、なぜか、基準値を超えるシアン化合物が検出されてしまい、食用として流通するには至っていません。
主犯の真浦綾子さんを中心としたチームは、シアン化合物が発生しない栽培方法を確立することを目指し、十勝の農業技術を生かして研究を進めます。
初年度から5年間は栽培ノウハウの確立に注力し、その栽培技術を販売するライセンス事業へ展開予定です。
成功すれば、日本の農業に新たな産業を生み出し、将来的には海外への輸出も視野に入れています。
今回は前半の5チームを紹介しました。
いかがでしたか?
次回のコラムでは後半の4チームと米沢則寿帯広市長の講評を紹介します。
どうぞお楽しみに。
アーモンド!確かに【最北端のアーモンド】、いいですね、ガストロノミーにとっての聖地、十勝にマッチする食材開発、注目していきます。
ヤドカリpt、それほどの数の空き家があるのですか?まずは【デジタル住民】の誘致策はいかがでしょうか? ご興味あれば是非